ブログ☆【AC・アダルトチルドレン=子どもっぽい大人?!】

【AC・アダルトチルドレン=子どもっぽい大人?!】

ぐっと春らしくなったと思ったら、とつぜん雪が降ってきたり・・・

しばらくはまだ上着が必要な釧路ですね。

ここを訪れてくださっているみなさまはいかがお過ごしでしょうか。

上の写真は、おととい日曜日、よく晴れた釧路湿原の風景です。



先日「アダルトチルドレン(AC)は子どもっぽい大人のこと」という文章を

偶然目にして驚いた中谷内です。

SNS上でしたが、これは典型的な誤解ですね。

今もそういう誤解が実際にあると知ってちょっと残念でした。

私自身もACの自覚があって今のプロセスに至るので、

今回はこのことについて改めて書いてみようと思います。



改めまして・・・

みなさんは「AC」「アダルトチルドレン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

臨床心理の世界ではもうおなじみというより、かなり前に使われていた・・・

という感じもする言葉になってきていると思います。

実は私自身も初めて聞いたときは「子どもっぽい大人」とか、

「いつまでも自分の問題を親のせいにして怒っているオトナ」というふうに誤解していました。

しかし、本来の意味は全く違います。



ぐっと手短に説明しますと・・・

アメリカで当初、アルコール依存の問題がある家庭に育った人たちのことを

臨床家たちの間でそう呼んでいたのですが、

その後、アルコール依存問題に限らず、機能不全な家庭に育ったり、

様々な虐待を受けて育ったりして、

生きにくさを抱える人たちのことも含めて呼ぶようになっていきました。

その概念がいわゆる心の病の回復や自己の成長に役立つと考えられ、

日本にも紹介されたわけですが、

その際に例の「子どもっぽい大人」「いつまでも親のせいにして甘えてる人たち」

などという誤解も同時に広まってしまい、

せっかくその自覚に至っても自己開示できず仲間と出会えなかったり、

ACそのものに対しての風当たりが強くなっていったりしたようです。

また、「ACといえばアルコール問題」というイメージが強かったり、

認識は広まったけれど治療法の広まり・実践が追いついていなかったりして、

専門家の間、特に医療現場で批判や苛立ちを招く、という現象も起こってしまいました。

これもとても残念なことだと私は思っています。



そういうわけで、「AC」ではなく「サバイバー」とか「トラウマ・サバイバー」、

その後回復・成長した人は「スライバー」という表現を使うこともありますね。



そもそもACは病気ではありません。なので、精神科の診断名でもありません。

あくまでもひとつの「概念」であり「自覚」です。

だから、だれかに「あなたはACよね」なんて言われる筋合いのものではありません。

その「自分はACなんだ」「だから苦しかったんだ」という自覚が、

自分の回復や成長、あるいは生きづらさの理解や修正に役に立つ、

と思う人は持っていればいいわけです。

必要なければ持たなくていいし、自覚を持ちながら回復中の人は、

そんな自覚もいつかは薄れるということが起こりえますね。

「え?あ~、そういえば私もACですが、それが何か??」みたいに。

あるいは「ACだからこそ今の自分がある」と誇れるようにさえなるかもしれません。



また、AC概念が生まれたアメリカでは、文化的にもアルコール依存が

代表的なアディクション(嗜癖)であり、

そのために多くの人々がアルコホリックの子どもとして育っているという背景があります。

しかし、日本では体質的なこともあって事情が異なります。

その一方で、暴力の修羅場や、見えにくい虐待や支配にさらされている子、

親の関心を引けない子が少ないわけでは決してないでしょう。

私もそうですが、両親にアルコールの問題がなかったサバイバーたちにも、

このACという概念は今も十分に役立つものと私は考えています。



最後に、アメリカのセラピスト、ウェイン・クリッツバーグ氏の文章を紹介しますね。



「アルコール問題家族で育ったということは大変な環境の中で生きたということであり、

そういう環境を生き抜いた人々が創造性や勇気に欠けているはずがない。

彼らは真のサバイバー(逆境を生き抜いた人々)なのだ。

彼らにとってのこれからの課題は、

過去に身につけたスキルやテクニックをもっと創造的な新しい生き方のために使うことである。

自分を外に向かって開き、新しいスキルを学び、さまざまな見解に沿って行動してみること・・・

それが彼らにとっての挑戦なのである。」



明日からの心理学講座では、ACの自覚のあるなしにかかわらず、

私たちが抱えるさまざまな生きにくさについて皆さんとともに

多面的に考えていけたらと思っています。

知識は力。

各回まだ申し込み可能です。


参考文献:『アダルトチルドレン・シンドローム 自己発見と回復のためのステップ』

W.クリッツバーグ著 斎藤学監訳 金剛出版